【05/30(Tue)】 最初はキライだったけど…

　今日は送別会…いや…今日も送別会…。
　次々と優れた医師達が去ってゆく…。
　今日送る先生は…最初はキライだった。
　愛想がなくて，ツンとしてて，至急報告の時も「重要なとこだけで良いんだけど…」とか…そっけなくて…。
　でも…2年一緒に働いた。
　2年一緒に仕事して分かったこと…当たり前のことを当たり前にやって…スタッフを信頼する先生だったと言うこと…単に無口なだけで話せばいい先生だった…と言うこと。
　徐々に会話を重ねるごとに，その先生の言葉少なげな中のおもしろさや，博識なところ，はっきりとしたものを持っていることが分かった。
　そして…「重要なとこだけで良い」と言うのは…「面倒」ではなくて「重要度の判別の裁量が自分たちに委ねられていた」と言うこと。
　徐々に，至急報告をするごとに，報告事項を熟考して選別するようになって，その結果を聞くようになって分かった。
　自分たちが「重要所見」として報告したことはきちんとカルテに書いてあり，診断の根拠となっており，治療の一助となっていた。「問題ない」と言ったことはそれを信じて(多少の裏付け・判断もあるが)治療を進めてた。
　あとでほかの検査と合わせた時にマッチングしていた時は「さすがだなぁ…」ってつぶやいてたなぁ…。
　検査技師の仕事は…ホントは境界に立っていると思う。
　「診断できるだけの能力」がなければ，「偽陽性or偽陰性の否定」ができない。技術の問題なのか，患者の問題なのか，ホントに病的なのか判断できない。「その先の治療」を見越すことができなければ「次に何を見ればいいのか?」「何を疑えばいいのか?」「何を見落としてはいけないのか?」「薬の効果は出てるのか?」が分からずに結果の垂れ流し。
　しかし，資格上は「診断はできない」と言う立場。
　それでも，「検査」に関しては「エキスパート」であり，「専門外の科目」に関しては「専門医の目」に追いつくほどの目を持っていなければならない。
　思えば，育ての先生達は，「検査をすること」だけでなく「検査結果を読むこと」まで指導して下さった。
　だからこそ，一緒に仕事をしてきた先生達は，我々を「検査結果を読んで伝えられる技師」として，「手先」ではなく「仲間」として扱ってきたんだと…。
　それが，時に厳しく，時に冷たく感じたけれど，根底に戻れば「主治医の目」「主治医の耳」「主治医の手」「主治医の脳」にどれだけ近づけるか…だった。
　それが普通にできていたから…その先生も…そう言う目で見ていたんだと…。
　「ん～…とにかくマメだよねぇ…」
　時々…その先生が笑顔でつぶやく言葉…。そこにはそれらが集約されてたのかな?
　「全部，自分でやっていかなきゃいけないんだよねぇ…」
　見送った多くの先生達がつぶやいていった言葉…。

　最近…ホントに…閑古鳥が鳴くと言うか…閑古鳥の姿さえ見えないのでは?…と言う状況の中で…病院がどうなろうと…何年経とうと…忘れてはならないことだと…振り返れば感じる…。
　なぜだろう…色んな先生達を送ってきたけど…ここ1年くらいの間に送ってきた先生達には…「また戻ってきますよね?」って気持ちが沸いてくる…。
　ホントに…戻ってきたらいいな…。いい先生達が戻ってきたら…患者さん達も戻ってきて欲しいな…。
　今は…栄枯盛衰を思うと…涙が出る…新聞記事を読むたびに爪痕がつくくらい拳を握りしめる日々です…。
　最初はキライだったけど…最後は大好きでした。
　あの頃はツラかったけど…今の空虚な時間の方がツラい気がします。
　何年経っても…ウチの検査室は変わりませんよ，変えさせませんよ。
　病気になったのは仕事のせい…。でも…病気を抱えながらもなんとか過ごせるのは仕事のおかげ…。
　失うだけ失ったら…きっと取り戻せる…何年もかかるかも知れないけど…。
　何度も谷底に墜ちたから…そう思うことだけが…今の自分をなんとか保てることです。