破滅へのカウントダウン

　ウチの病院の破滅へのカウントダウンはもう間近。
　大先生が執拗な嫌がらせによって異動して半年，ついに名医にもその手が及んだ。
　「辞めるらしい」
と言うところまでは聞いていたけど…行き先も決まっていたとは…。
　そして…その先生がそこへ行けば…ただでさえ名医揃いのその病院は…首都圏トップに踊りでる。
　その一方でウチの病院は陥落し…この状況ではもう医者も集まらない。末端がどれだけ熱くなって仕事をしようとしても実るはずもなくなる。
　巨額が動く利権の絡んだ病院改革。その中で医療過誤を巡るひと騒動。
　これに目をつけたのか，内部告発した医師も，責任を全うした大先生も不当な処遇を受ける。
　そして…「処分」と言う名の下で…隠蔽に荷担していた院長は理事という肩書きで院内に残る。正しき者は降格・退職，異動と言う目に遭う。
　そして…体裁を守るために奔走し…改革を断行するに尽くした者は何かしらの名前で残ることができる。
　改革することで巨額の金と利権が動き，それを阻止されたが故に，核となる医師達の首切りを企て，徐々に病院の機能を低下させているのが現実…ココまで周到で薄汚いとは…。
　名医が去れば…来る医師もいない…下についていた医師達も辞めていくことは目に見える。
　そして…思惑通りの改革が進む。しかしそこには「採算」の見込みはない。そうなれば病院を売却することになろう。
　すでに系列病院を一つ売却している。これでウチも売却してしまえば，自営の病院を減らすことができるから歳出は減る，これは経営側の思惑。
　病院に目をつけた悪者の私利私欲と，経営側の強引な経営改革手段…これらの思惑が一致するならば…あとはそれに荷担する者を擁護し…阻止する者を冷遇する。
　こうして…末端で働く者の意欲も落ちれば，間違いなく集客も落ちて，病院存続すら困難になる…。
　「持ち上げて…朽ち果てさせる…」…これは…定められた運命だったのか?
　苦しくても…正直に…熱く生きていくことは…身を滅ぼす…。
　「頑張る」と言う言葉を誰も教えてくれなければ良かったのに…。